ウサギたちは小屋の一角に作られてある風除けスペースに身を寄せていた。みんなでくっついて暖をとっているのだろう。
 小屋は小屋でもつくりはしっかりしていて、幅広な庇がついているため、陽の光は小屋の端までしか届かない。そのくせ風通しだけはとても良いのだから、小屋の外にいたときよりも数段寒く感じた。
「寒いのは……心かな」
 自然とウサギに手が伸びる。
 ウサギはやっぱりあたたかかった。指先からじんわりと体温が伝ってくる。でも、完全に冷え切ってしまった手首まではあたたまりそうにない。
「翠葉ちゃん」
 聞き覚えのある声に顔を上げる。と、予想どうりの人が立っていた。
「秋斗、さん……」
「どうして?」という疑問までは言葉にならない。