「だ、大丈夫っ……なんともないよっ。これから初等部に動物見に行こうと思っているくらいには元気っ」
「ホントだ……。珍しく大声出してるし。顔色悪いけど……威勢はいいかな?」
「……あっ、学内循環バスの時間に間に合わなくなっちゃうから、バイバイっ」
「おいっすー……気をつけろよー? 主に足元――」
 言われた矢先に躓いた。とくに何があるわけでもない場所で。
 咄嗟にサザナミくんが腕を掴んでくれたから転ばずに済んだけれど、さすがに決まりが悪い。
「ほら、言わんこっちゃない……」
「ごめんなさい……ありがとうございます……」
「寒い時期に転ぶと痛えから気をつけなよ?」
「うん」
「じゃー、今度こそバイバイ。また来年な!」
 サザナミくんは手をヒラヒラとさせて部室棟の方へと向ってだるそうに走り出した。彼の背を見送り、私は芝生広場へと向って歩き出す。つまりはサザナミくんが向った方向と同じ。