下駄箱前ではサザナミくんに会った。
「みっそのーさんっ!」
「サザナミくん」
「さて、ここで問題です。俺の下の名前は?」
「……千里くん」
「うっしっ! 正解っ」
「っ……なかなか覚えられなくてごめんねっ?」
「まぁねっ。あれだけテストできんのに、人の顔と名前においてだけ恐るべき記憶力の悪さを披露されてどうしようかと思ったけど、結果的に覚えてもらえてりゃオールオッケーっしょ?」
「…………」
「……つか、めっちゃ顔色悪い気がするけど」
 長身の身体をくいっと折って顔を覗き込まれる。サザナミくんにもだいぶ慣れた。でも、こういう距離感は慣れないし、顔色を指摘されるともっと困る。