「俺も選びたかったのにぃぃぃ……。――仕方ない。じゃ、色は俺が選ぶ」
「それでもいいわ」
 会話はお母さんと唯兄だけで進められ、私を含むあとの三人は置いてけぼりだ。
 はっと我に返った蒼兄が、
「っていうか、翠葉が選ぶんじゃないの?」
「だってー……着せたいものがあるんだもの」
 お母さんが上目遣いで蒼兄を見る。
「俺だって着せたいものたくさんあるよっ!?」
 便乗して、むんっ、と主張したのは唯兄。
 一瞬だけふたりに気後れしたものの、蒼兄はすぐに態勢を立て直す。
「いやいやいや、少しは翠葉の意見も聞こうよ。着るのは翠葉なんだからさ。ね? 父さん」
「そうだなぁ……。ふたりが選んだものでも翠葉が気に入れば問題ないと思うけど。……でも、翠葉が好きなのを選んでいいよ? もし意見が割れるなら両方買えばいいと思うし」
 にこにこと答えるお父さんに、
「……途中まではまともだったのに、結局はそうなるんだ」
 と、蒼兄が肩を落とす。けれど、私も同じことを思っていた。