光のもとでⅠ

 やみくもに足を前へ踏み出す。と、半月ステージに爪先が当たった。ちょっと……かなり痛かった。
「翠葉、掃き掃除と拭き掃除どっちがいい?」
 海斗くんに声をかけられる。
 ステージ上では海斗くんが中心になって掃除の分担を決めているところだった。
「どっちでもいい」と答えようとすると、
「海斗、拭き掃除は水使うから却下だろ」
 河野くんの一言で、
「あ、そうだった。じゃ、掃き掃除お願い」
 と、掃き掃除を任命される。
「ありがとう」を言う間もなく、みんな各々の分担に取り掛かった。
 私語を禁止されているわけではないので、手さえ止めなければ話しながらの掃除も許される。
 単なる学期末大掃除なのに、まるでちょっとしたイベントのよう。床拭きの速さを競ったりなんやかや。冬休みを目前にはしゃぐクラスメイトの笑顔に心が和む。つられて頬が緩むくらいには。