「ほぉ……学期末大掃除中にバスケをやろうとはいい度胸。仮にも、元生徒会長、現生徒会役員が主犯とはな」
 振り返ると、微笑を湛えたツカサが腕を組んで立っていた。
「なんのために人が集まっていると?」
 少し首を傾げにこりと笑う。サラリと動く黒髪に、心臓がトクンと音を立てた。
 慌てて海斗くんたちに視線を戻すと、海斗くんと久先輩は一歩後ずさって佇まいを直す。
「「お、大掃除のためでありますっ」」
 軍隊さながらの返事。ビシッと直立し、手の指先までピンと力が入ってる。
「わかっているならさっさと持ち場に移動。そのボールは預からせてもらいます」
「えっ!? でも、このボール学校のじゃなくて俺の私物っ」
「掃除が終わったら返します」
 まるで生徒と先生が話しているような光景だった。
 ふたりはくるりと身体の向きを変えて走りだし、その場にいた人たちもあっという間に散開する。ただひとり、私だけがその場に残された。