警備員室前で唯兄が軽く頭を下げ、
「お疲れ様です」
 私も唯兄に習って同じようにペコリと頭を下げた。
 外に出ると、救急車停車位置から十メートルほど離れたところに車が停まっていた。
 相変わらず湊先生の水色ラパンである。うちの自家用車はお父さんが乗っていってしまっているため、唯兄やお母さんが車を使うときは湊先生の車を借りているようだった。
 ドアを開け、唯兄は私を中に押し込めながら、
「お待たせー」
「そんなに待ってないわ。ちょうど車があたたまったとこ」
 お母さんがにこりと笑い、ドアが閉まったのを確認すると車を発進させた。
 私は持っていた携帯の電源を入れる。ディスプレイがパッと光った。
 いつもなら、光を見れば「あたたかい」と思うのに、今日はどうしてか冷たい明かりに思えた。