相変わらずちぐはぐな三つのアイテムをぼんやり見ていると、エレベーターがポーンと軽やかな音を立て一階に着いたことを知らせる。唯兄にかばんを取られ、
「自分で取りに行ったのってソレが気になったから?」
「あ、うん。なんか……ないと落ち着かないの」
「……そっか。ま、携帯を持っててくれるに越したことはないけどね」
 言いながら、救急搬入口へと向う。五時半を過ぎると正面玄関からの出入りができなくなるから。
 ほとんどの照明が落とされ薄ぼんやりとした中、救急外来の待合室だけが煌々と明かりを灯していた。ポツリポツリと人が座っているところを私たちは速度を変えずに通り過ぎる。
 廊下を進み警備員室が近づくにつれ、気温が徐々に冷たくなっていく。自動ドアは閉まっているけれど機密性が高いわけではない。わずかな隙間から、外気が入り込んでいた。