光のもとでⅠ

「唯兄、すぐ戻ってくるから」
 渋る唯兄をその場に置いて、警備員さんに向き直る。
「さっきはすみませんでした」
 頭を下げる途中で警備員さんに止められる。
「申し訳ございません。私どもは八時で交代しているので、お嬢様とは今お会いしたばかりです」
 言われて驚く。どうやら、さっきスーツを私にかけてくれた人とは違うようだった。
「前任者にご用でしたら承りますが?」
 私はそれを丁寧に断った。
「あの……お名前だけ教えていただけませんか?」
 私は警備員さんの顔を覚えていない。次に会っても気づくことはないだろう。名前を聞いておけば、後日謝罪することもできるかもしれない。
 警備員さんは自分の名刺に前任者のフルネームを書いてくれた。
 私は礼を述べて廊下を真っ直ぐ進んだ。