「もうすぐ冬休みですね」
 声を発したのは私ではなく涼先生だった。
「血便もないようですし……なるべく消化のいいものを食べるように心がけてください。それと、次に嘔吐した際には消化器科にかかるように。湊にもご家族にも伝えておきます。いいですね?」
 それはつまり――今回は見逃してもらえる、ということだろうか。
 何歳なのかわからない。それでもツカサや湊先生より明らかに年を重ねてるであろう端整な顔立ちを見ていると、涼先生が口を開いた。
「先日は――」
 言葉に身体が硬直する。しかし、続く言葉は予想していたものとは違った。
「自宅までお越しいただいたようで、妻がとても喜んでいました」
 にこりと笑う。
 私はまだ緊張の中にいて、何を返すこともできずにいた。