施術がすべて終わって携帯コーナーに着いたのは三時。
 でも、私が楓先生の携帯を鳴らすことはなかった。
 だって、そこにいたから。
 楓先生は九階の携帯コーナーにいたのだ。
「楓先生?」
「アハハ……ちょっと手に負えなくて休憩しに下りてきちゃった」
 苦笑して見せるけど、疲れが色濃く見える。
「顔を合わせば口喧嘩にしかならなくてね」
 まじまじと先生の顔を見ていると、
「何?」
「いえ……あの、先生が……人に見えたから」
 先生は、くっ、と笑い、その笑い方が秋斗さんとかぶる。
「翠葉ちゃん、俺は医者だけど、医者も人間だよ?」