さらに、若槻さんが蒼兄とは反対側の私の隣に身体を滑り込ませる。と、蒼兄と同じように私の頭に頭をこっつんとぶつけてくる。
「そうそう。リィは望むものを口にすることが先決。そこからリィの世界は開けていくんだよ」
 ラグの上に置いたカップが倒れそうな気がして、それをテーブルに置くために身体を少し浮かせたら、後ろでゴチ、と音がした。
 振り返るとふたりは渋い顔をしている。
 私ひとりが抜けたことで、蒼兄と若槻さんの頭がぶつかっていたのだ。
「すーいーはー……」
「リィ~?」
 ふたりして恨めしい顔をしている。
「あははっ、ごめんなさい!」
 なんだかふたりがとても愛おしくて、大切に思えて、ふたりの腕に抱きついた。
「蒼兄、唯兄、ありがとうっ」
 ふたりに抱きついたまま口にすると、
「「どうしたしまして」」
 と、ふたりは抱きつかれている腕と反対側の腕を私の背に回してくれた。
 背中がじんわりとあたたかくなり、心まであたたかくなる。