光のもとでⅠ

 口にした食べ物の味がわからない。何を食べたのか、目に映っているはずなのに、きちんと脳に伝わらない。
 自分が呼吸をしているのか、ふとしたらそんなことまでわからなくなりそうだった。
 何も変わらないのに、みんなそういうふうに接しているのに。それはもしかしたら藤宮の流儀なのかもしれなくて、でも、本当は私を気遣ってのことなのかもしれなくて。
 今の私は、酸欠で水面近くを彷徨っている金魚みたいだ。
 水の中にいるから外の音がくぐもって聞こえるに違いない。
 どうしても同じ空間にいるという実感が湧かなかった。
 どうしたら同じ空間にいると思えるのかがわからなかった。

 ――目を開ける。と、切迫した顔で私を覗き込む顔があった。
 湊先生と昇さん、それから楓先生。
 左手が痛い。
 視線を手に向けると、湊先生が脈の場所をぐっと掴んでいた。
 同じように首の側面にも人の手が添えられていた。それは栞さんの手だった。
 何が起きているのか……。