私はダイニングへは行かず、キッチンへ入る。
 キッチンの中から、まるでうかがい見るようにダイニングにいる面々を確認した。
「みんな揃ってるわよ」
 お母さんに背後から声をかけられた。
「秋斗くんも司くんも、静も湊先生も楓先生も。海斗くんも昇先生もね」
「お母さん……」
「それぞれに思うところはあるでしょう。でも――どう?」
 お母さんに、ダイニングにいる人を見るように促される。
「みんな普通にしてるでしょう?」
 話の主導権を握っている人はとくにいない。
 海斗くんは突如現れた佐野くんに驚きつつも、「テスト勉強どう?」 と訊き、それに唯兄が「わかんないとこあったら教えるよー? ただし、理系オンリーね」 なんて答えている。
 蒼兄はその様子を近くで見て笑っていた。