「人間の妊娠って動物の中ではとても確率が低いのよ。子供を望む夫婦が排卵日と予測される日にセックスをしても、その確率は二十パーセントから三十パーセント。これを低いと思うか高いと思うかは立ち位置によって異なってくるけれど、それでも、人の命が芽生える可能性のあることを『危険』なんて言葉で片付けてほしくないのよね」
 それに、と先生は続ける。
「危険日だの安全日だのと言っている人たちほど、その日を正確に認識してはいない」
 そこまで話すと表に視線を戻した。
「まず生理前は高温期が続いていて、ストン、と落ちたここ。大体この日かこの翌日あたりに生理がくる。生理がくると体温は低温期に移行するの。そして十二日から十四日目あたりで排卵が起こる。その日は一ヶ月の中で基礎体温が一番低いとされる日よ。卵子が生きながらえるのは六時間から二十四時間程度。一方、男子の精子はどうだった?」
 さっき言われた精子の寿命を思い出す。