「まぁ、これは妊娠して中絶すると決めたときの話。基本は望まないのならば妊娠は避けなくちゃいけない。それが避妊、よ」
 先生は急に将来の夢を訊いてくる。
「翠葉ちゃんの将来の夢って何?」
 私はその問いに答えられない。
「まだ進路は決めてないのかな? ざっくりとした何になりたい、というものでかまわないんだけど」
「……私、先のことが考えられないんです」
 その一言に先生が瞠目した。
「……一年を無事に終えることができるのか、留年せずにニ年に進級できるのか。みんなと一緒に卒業できるのか。そんなことすらわからなくて、それ以上のことを考えられないんです。数年後の自分のビジョンが全く見えない……」