「……先生は話しちゃいけない立場の人だと思います」
「いつもなら、ね。でも、これに関しては秋斗くんから了承を得ているの。むしろお願いをされたわ」
「お願い、ですか?」
「そう――もし、自分が教材になるのなら使ってほしい、って。彼はそう言ったのよ」
 心臓が駆け足を始める。秋斗さんの名前を聞くだけで、ドドド、と心臓が脈を刻みだす。
「驚いたわ。彼が誰かのために何かしようとするなんて」
「え……?」
「私、彼を高校時代から見てきているのよ? 女性遍歴もそれなりに知っているし、どういう子なのかもある程度はわかっているつもり。その彼が、ただひとりの女の子に執着して、その子のためになるなら自分を例にあげてもかまわない、とまで言うんだもの」
 先生はどこか嬉しそうに笑う。そして、真剣な目で私を見た。