「翠葉ちゃん。呼吸をしてみて?」
「え?」と思う。
 私はほんの少しの息を吐き出してから、深く酸素を吸い込んだ。
 先生に止められるまでそれを繰り返すと。
「呼吸って面白いのよ? 吐かないと吸えないの。吸わないと吐けないの」
 とても物理的に当たり前なことを言われていた。
「知識も同じようなものよ。詰め込むだけじゃだめ。インプットとアウトプットはバランスよくしなくちゃね?」
 その言葉に、身体中に入っていた力が一気に抜けた。
 玉紀先生が言っていることと相馬先生が言ったことがふと重なる。
 きっと、相馬先生も玉紀先生と同じことを言いたかったのではないだろうか。
 吐いてから吸え、と――吐き出すことは悪いことではなく、吐き出したら新しいものを吸い込め、と言いたかったのかもしれない。
 性格や容姿、話し方など何ひとつ似ていないのに、言われていることは同じことのように思えた。