「なら、できそうなときは弓道部に来れば? マットも端に置いてあるし、翠ひとりがストレッチやるのには十分な広さがある」
「え……?」
「家でやるのもかまわないけど、学校にいたいんだろ? 部活終わるまでストレッチしてるなら帰りは送っていく」
 あ、そういう意味……。
「体調的に余裕がある日、姉さんのところでジャージに着替えて待っててくれれば迎えに行くから」
「でも、部活の邪魔になったりしませんか?」
「みんな部活中は神経が逸れるやつらじゃないから、その辺は気にしなくてもいい」
 さすが……。
「それでは機会があったら……」
 マッサージが終わり、先輩の手をマッサージしようとしたら遮られた。
「風呂に入ったら若槻さんたちと何か話すことがあるんだろ?」
「はい……」
「今日はいい。また今度やって」
 そう言うと、立ち上がって帰る準備を始めた。
 マッサージのお礼を言うと、「明日は学校で」と部屋を出ていった。
 私が玄関へ見送りに出たときにはすでに玄関のドアが閉まったところで……。
 珍しい、栞さんたちに何も言わずに帰るだなんて。
 不思議に思いつつ、若槻さんに言われたとおりお風呂に入ることにした。