光のもとでⅠ

「そうよ。大事なのは、何も知らずに『そのとき』を迎えないこと。急にお腹痛くなって出血したらびっくりするでしょう? 男子も同じ。急に射精したらびっくりしてパニックになるわ。だから、その前に身体の仕組みやどんな変化がどのくらいの時期におとずれる、という必要な知識を教えて心の準備のお手伝いをするのが私たちの仕事。別に学校じゃなくて親でも構わないんだけどね」
「あ……私に生理のことを詳しく教えてくれたのは母でした」
 確か小学校四年生の頃、学校で授業がある前日に教えてくれた。私が学校での説明をすんなりと理解できたのは、事前にお母さんが教えてくれていたからかもしれない。
 お母さんはトイレからナプキンをふたつ持ってきて、ひとつは開けて使い方を教えてくれた。もうひとつは、淡いグリーンの巾着袋に入れて「プレゼント」と言ってくれたのだ。
 いつ生理がきても大丈夫なように、通学かばんの中に入れておきなさい、と――。
 その話をすると、
「さすが、藤宮の卒業生ね」
 先生は嬉しそうに笑う。