光のもとでⅠ

「本当はね、持たせるものは何でもいいのよ。ただ、バッグやポケットに入るものじゃ意味がないわね。大切なのは、ある程度の大きさがあって、形はあるけど力を加えると形が変わってしまうものであること。それをずっと見ていること。ずっと持っていること」
 ずっと見ていること。持っていること……?
「体育の授業やトイレのとき。それから、家でお風呂に入ってるときは除外されるのだけど、それ以外は登校するときもご飯食べるときも寝るときも一緒」
「……なんだか、大変そうです」
「そう。それを知ってもらうための実習なの」
「え……?」
「翠葉ちゃんは今……十七歳ね。十七歳でも大変そうだと思ったでしょう? それを遊び盛りの初等部一年生から三年生にやらせるのは至難の技よ?」
 先生はいたずらっぽく笑いながら話す。
「サッカーがやりたくても鬼ごっこやりたくても、必ず持ってなくちゃいけないんだから。お稽古ごとや塾のときでもね?」
「……みんな、ちゃんと守るんですか?」