藤宮の初等部では低学年のうちに、性器名称のすべてと男女の身体の違いを習うらしい。それ自体はさして珍しいことではないかもしれないけれど、とても珍しいものがひとつ……。
 紙袋を使って一週間という長期模擬実習をするのだ。何の実習かというと、赤ちゃんをずっと見ていなくちゃいけない、という実習。つまり、紙袋を赤ちゃんを見立てた模擬実習。
「どうして、ですか?」
「どうしてだと思う?」
 紙袋を赤ちゃんだと思ったとして……。
 軽すぎないかな? あ、でも、小学生三年生までだし……落としても壊れないものであるため? それとも、ずっと持ってて疲れないため?
「なんでもいいわ。言ってみて?」
 私が思っていることを口にすると、
「それは持たせる側が考えることであって、持たされる側が考えるべきことじゃないわね」
 と笑われた。