新しく淹れたハーブティーを前に、先生が話し始める。
「藤宮はね、入学書類のひとつに少し変わった書類があるの。その書類にサインしないと子どもを入学させられないのよ。それが性教育に関するもの。ひどく過激であったり、過剰な教育をするわけじゃない。でも、どんなことをどの時点で教えるのか。そういうことは保護者も理解しておくべきことだし了承していただかなくちゃいけないから」
 初等部や中等部での性教育の授業は保護者が望めば公開授業になるという。
「藤宮の性教育は幼稚部から始まると言っても過言じゃないわ。身体を汚したら綺麗にすること。ハンカチやティッシュ、爪。運動靴に上履き、体操服にいたるまで、この頃から身だしなみや清潔といったものを意識させるの。かといって、小さい頃から『清潔』を厳しくしつけすぎると泥に触れられない、トイレ掃除ができない、そういう潔癖症の子になってしまうこともあるから、汚れたらきれいにする、くらいの指導ね。きっとどこの幼稚園でも外から戻ったら石鹸で手を洗う、ということを実践していると思うけど、それは衛生面だけのことではなく、すでに性教育の一貫でもあるのよ」
 初めて耳にする話に私は真剣に聞き入っていた。