玉紀先生は私の話を聞くにしたがいこめかみのあたりを引くつかせていた。
「ごめん、もういいわ。どんな教育を受けてきたのかは十分にわかったから」
 先生にハンカチを握らされ、自分が泣いてることに気づく。
「ごめんね。つらい話だったわね」
 先生は席を立つと、私の真後ろに立って座ったままの私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「あのね、ある一定以上の歳の教師はあまりちゃんとした性教育を受けてきていないの。セックスすることは悪いこと。そんな風潮……というよりは、大人が子供に隠してきた時代に育っているからそれを教えることに背徳感があるというか……。自分が教えられてこなかったものを人に教えるのはとても難しいことなの。……ま、だからと言って教職者がそれじゃ困るんだけど」
 先生からふわりと甘い香りがした。すぐに香水だとわかったけれど、ラストノートの優しい香りで気持ちごと包まれた気分になった。