光のもとでⅠ

 間一髪で支えられたから良かったものの、このまま倒れていたら痣くらいはできていただろう。
 さっきも翠の鼓動を感じられる距離にいたけれど、あのときは自分のことでいっぱいで、自分の心拍にしか意識がいかなかった。
 でも、今はしっかりと翠の鼓動を感じることができる。
 携帯で見たとおり、心拍はひどく乱れていた。
「正真正銘のバカだろ……」
 支える腕に力がこもる。
 こんな身体で何やってるんだ……。
「短時間で何度同じ過ちを繰り返せば気が済む?」
 心配なのに苛立ちがそれを上回る。
 翠の体調に対してはいつも心配と怒り、苛立ちが入り混じる。
 こんな言い方をしても翠に伝わるわけがないのに。