光のもとでⅠ

 バイタルといっても携帯に表示されるのは簡略的なものだから細かいことはわからない。
 血圧数値はいつもどおり低く、今はそれよりも心拍の乱れのほうが目立って見えた。
『不整脈が出てる。本人も納得してて、今日は学校を休むことになってるから。それだけ伝えておこうと思って』
 かなりの頻度で脈が跳ぶ。
 ここまでひどければ自分だって嫌でも心臓の動きに違和感を覚えるだろう。
「すみません……」
 ほかに言える言葉がなかった。
 こんな体調でここに来たのは俺がここにいたからほかならない。
『……なんというか、司が謝る必要はないと思う。そこに戻るって決めたのは翠葉だから』
 信じられない思いで翠に目をやる。
 今、御園生さんは「そこに戻ると決めたのは」と口にした。
 それはつまり、さっき一階に下りたとき、少なからずとも選択の余地があったということで――。