光のもとでⅠ

「お手数をおかけしてすみませんでした」
 言葉は思っていたよりもすんなりと出てきた。
『いや、それはかまわないんだけど……。今、翠葉は?』
 御園生さんが翠のことを気にかけるのはいつものことだけど、この時点ではなんの用で電話をかけてきたのかに気づけなかった。
「目の前にいます。……代わりますか?」
『いや……なんか訊いた?』
 こちらをうかがうような訊き方だった。
 何かって……?
 妙な胸騒ぎがして視線を翠に向ける。
 翠は眉根を寄せ怯えたような表情をしていた。
『やっぱり自分じゃ言わないか……。翠葉、昨夜一睡もしてないんだ』
 テーブル上に置かれていた翠の携帯に手を伸ばし数値を見る。