「ツカサ……何度選択させられても私の答えが変わることはないよ。それだけは信じて?」
 俺は腕に力をこめ、翠の首元に顔をうずめる。
「……翠はバカだ。なんで戻ってきた……?」
 そんな言い方をするくせに、俺は翠を放そうなどと微塵も思ってはいない。
「……なんでって、ツカサがお財布がなかったらバスに乗れないって言ったんでしょう?」
 返ってきた答えは「当然」なもので、「特別」ではない。
 どれだけ勘違いしたくても、そこだけは勘違いさせてもらえない。
「……嘘はついてない。バスには乗れない。でも、携帯さえあれば警護に付いている人間を呼び寄せることも、コンシェルジュに迎えに来させることもできる。ここから藤山に戻る術が全くないわけじゃない」
 俺は翠が戻ってこなくても藤山へ戻る手段はほかにいくつか持っていた。
 それらを使うか使わないかは別として……。