光のもとでⅠ

 計り知れない不安に駆られ、すぐにコックを捻ってシャワーを止めた。
 バスタオルで雑に身体を拭き、着ていたものを身に纏って洗面所を出た。
 ダイニングに置いてある翠のかばんはそのままだった。
 俺はその足で廊下を突っ切り玄関に立つ。
 単なるドアが大きく重いドアに思えてならない。
 レバーに手をかけることはできなかった。
 次にこのドアを開けるのは誰か――。
 考えただけでも身震いを起こす。
 俺は壁に寄りかかり、自分の身体を抱きしめるようにその場に立ちつくしていた。
 一分が何百秒にも感じられる中、ドアの向こうに人の気配を感じた。
 インターホンが鳴ることを期待したけど、音はガチャリ、と鳴る。
 俺は一気に落胆した。