「ツカサは?」と視線で訊かれ、俺は翠の睫に残る涙を見ながら、半ば強がりの返事をした。
『じゃぁさ、握手して仲直りってことにすればいいと思うよ』
 ……それが一般的なのか? それが正しい答えなのか?
 疑問に思ったのは俺だけらしい。
 翠はあっさりと納得した。
「ツカサ、握手したら仲直りみたい」
 目が「仲直りしよう」と言っている。
 訴えかけ方がハナと酷似していた。
 こんなことで済むのなら、と俺は右手を翠の前に差し出す。
 翠は携帯を左手に持ち直して右手を重ねた。
 互いの力が作用し、手が重なるだけではなく「つながる」という形に変化する。
「仲直り完了?」
「……そうなんじゃないの?」
 ぶっきらぼうにしか答えられないくらい、心中は複雑だった。