顔を上げると、翠が真っ直ぐ俺を目指していた。
けれど、視線が交わることはない。
無意識に前へ伸ばされた手が証拠。
眩暈を起こしたまま歩いている。
そして、足元に転がっていたクッションに躓いた。
ほんの数秒間の出来事。
自分の目の前で翠が崩れ落ちる。
反射的に出した手を俺は引っ込めた。
触れたくて、触れられなくて――。
翠の膝が着地した場所は、俺の足の内側だった。
痛みに顔をしかめるものの、それを声に出すことはない。
もしかしたら、「痛み」全般を我慢することに慣れすぎているのかもしれない。
けれど、視線が交わることはない。
無意識に前へ伸ばされた手が証拠。
眩暈を起こしたまま歩いている。
そして、足元に転がっていたクッションに躓いた。
ほんの数秒間の出来事。
自分の目の前で翠が崩れ落ちる。
反射的に出した手を俺は引っ込めた。
触れたくて、触れられなくて――。
翠の膝が着地した場所は、俺の足の内側だった。
痛みに顔をしかめるものの、それを声に出すことはない。
もしかしたら、「痛み」全般を我慢することに慣れすぎているのかもしれない。


