光のもとでⅠ

「ツカサ……?」
 顔を上げることもできなければ呼びかけに応じることもできない。
 声が震えそうだったんだ……。
 何か口にしたら自分が崩れるんじゃないかと思った。
 けど、何も言わなければ翠はそのまま俺との距離を詰める。
 すぐそこまで来ている、と気配が告げていた。
 咄嗟に、
「来るな」
 短く放つ。
 長い言葉は話すことができなくて。
 翠の歩みが止まった。が、それも束の間のことだろう。
 このまま何も言わなければ翠は歩くことを再開する。
「それ以上来ないでくれ――」
 俺ははっきりと口にした。
 直後、トスン――音がした。
 翠がラグに膝を落とした音だった。
 翠は堰を切ったように話しだす。