光のもとでⅠ

 先輩の言葉を最後に、ドアが閉まるとき特有の空気の圧力を感じた。
 廊下の照明は点いているが、部屋の照明は何ひとつ点いていない。
 俺はそんなリビングの窓際にいた。
 ちょうど、翠が立つ廊下の延長線上に。
 翠がゆっくりと、確実に歩みを進めるのが見える。
 廊下の照明はダイニングの手前部分までしか届かない。
 翠の側からは暗いリビングにしか見えないだろう。
 仮に俺の姿が見えたとして、逆光で表情を読まれることはない。
 物理的に見えない。
 わかっているのに俺は下を向く。
 どんな顔をして会えばいいのかわからなくて。
 充血している目など見られたくはなくて。