朝の四時――通常なら携帯が鳴る時間ではない。が、自身の近くに放置していた携帯が主張を始めた。
 ディスプレイを見なくてもだいたいの予想はつく。
 ……翠しかいない。
 今までにこういうことがあったか、というならば答えは否。
 そのあたりの常識は相応にあるらしく、変な時間にかかってきたことは一度もなかった。
 でも、これは翠だと思う。
 未だ鳴り止まないコール音と暗闇の中で規則的に点滅する光を、ただただ視界の端に捉えていた。
 カチャ――音のした方に視線を向けると、寝室から出てきた久先輩が立っていた。
「それ、出る約束でしょ?」
「…………」
「翠葉ちゃんからじゃないの?」
 先輩はつかつかと歩いてきて光源に手を伸ばす。