「会長はピンポイントでそこをついてきたってわけか」
 会長がリィに期待してるっていうのは、つまりそういうことなんだ。
 もう一度与えられる選択権に意味なんてない。
 リィの答えなんて端から問題視されていない。
 藤宮財閥会長、藤宮元――俺、この人嫌いだ。
 とことん自分とこの孫がかわいくて、リィなんてパーツ扱いも同然じゃん。
 腹立たしいことこの上ない。
 ふつふつと煮え立つ感情を心の冷蔵庫に放り込む。
 放り込んで数秒後、もうひとつ合点の行く内容にぶつかった。
 会長がリィを気にいっているのは自分たちの孫がここまで影響を受ける人間だからなんじゃないの?
 秋斗さんも司っちも、リィに会うまではこんなに他人のことを考えることはなかったんじゃ――。