「何かあったんですか?」
『いや、何も……』
 イヤホンから聞こえてくる声にかげりを感じる。
『あるとしたら、司が試されてるってところかな』
 なんですか、それ……。
「試すも何も、何もないじゃないですか」
『そうだな。何もないけど、雅のファイルが司の手元にある』
 雅のファイル、とは秋斗さんが念のためにと調べ作った資料のことだろう。
 それがどうして司っちの手に……? 不可解極まりない。
 雅嬢の件に関しては、ずいぶんと前からオーナーに一任されており、今もそれは遂行中だという。
 だから、俺たち警備会社サイドは雅嬢のことは切り離して考え、リィの今後を予測した。
 学園内においては今までのように呼び出しを受ける可能性があるだろう。
 しかし、いずれも風紀委員と学園警備の守備範囲内。
 それで問題なし、と片付けた。