光のもとでⅠ

 俺はゆっくりと彼女に近づいた。
 彼女は座ったまま動かない。
 司が走り去ったそのときから、ずっとこんな表情をしているのだろう。
 口を少し開け、手元の携帯に視線を落としている。
 茫然自失そのもの――。
「翠葉ちゃん、帰ろう」
 彼女は瞬きもせず、身体を揺らすことなく消え入りそうな声で「はい」と答えた。
 見ていられないほどに痛々しい。
 今すぐ抱きしめたくなるほどに。
 彼女にかけられていた男三人分の制服を武政に渡し、代わりに用意されていた毛布で彼女を包む。
 包んで、そのまま抱き上げようとした。
 自分の腕の中におさめたくて。
 早くこの寒い場所から、棘だらけの場所から連れ出したくて。