一階は座敷とテーブル席が縦二列にわかれており、テーブルごとに小さなグループがいくつもある。
 店員の出入りが激しいうえにかなりうるさい。
 これでは落ち着いて飲めないだろう。
「秋斗様、面食らってらっしゃいますね」
 蔵元がくつくつと笑う。
「ま、秋斗さんがこういうところに馴染んでるところも想像できませんけど」
 唯に言われて口を噤む。
 あまり馴染みたくもない、と思った自分がいたから。
「こちらですよ」
 蔵元が指したのは箱――いや、違う。小さな箱みたいに見える店内エレベーター。
 男が四人乗ると窮屈さを感じそう、というあり得ないほど狭いエレベーターで二階へ上がる。
 次はどんなフロアなのか、と足を踏み出すと、一階とは趣の異なるフロアだった。