朗らかに笑いながら彼女は伝票を持ってカフェの奥へ消えた。
 再度ふたりになると、彼女は落ち着きなくグラスに視線を落としていた。
 きっと、会話のないこの場に困っているのだろう。
 俺がクスクスと笑みを漏らすと、
「秋斗さん……?」
「ううん、正直だな、と思って。でも、そんなに困らなくていいよ」
 そのままの君が好きだと、何度言ったら伝わるだろう。
 でもね、一生理解されなくてもいいよ。
 俺はその都度君に伝えるから。
「一緒にいること、もっと楽に考えて? 話題提供ならこと欠かないよ? もう一年以上前の話だけど、この席で蒼樹とお茶してたときに蒼樹の彼女っていう女の子が現れてね、俺、初めて修羅場に同席しちゃったよ」