「まだ太陽はあそこにあるのに、四時を過ぎるとすぐに陽が落ちちゃうんですよね」
 翠葉ちゃんは太陽を見ていた。
 その横顔がかわいかったから、やっぱり攫っちゃおうと思う。
「陽が沈むと急に冷え込むから、そろそろ引き上げようか」
「はい」
 引き上げる――つまり、司がマンションに帰ると言わない限り、ここ藤山でさようなら、ということになる。
 司、どうする?
 そんなふうに彼女と接しているのなら、俺は容赦なく彼女を攫っていくけど。
 司は俺の視線に気づかなかった。
 どこか面白くなさそうな顔で路地脇の草なんか見て……。
 ――司、本当にそれでいいの?