「すみません……つい、時間を忘れてしまって」
 カメラのレンズにカバーをつけながらこっちに戻ってくる。
「かまわないよ。司だって翠葉ちゃんが楽しむためにここへ連れてきたんだろうし。だろ?」
 また少し睨まれた。
 そして、顔を逸らしたまま彼女に向けて言葉を放つ。
「迷惑ならとっとと声をかけてやめさせている」
 俺は慣れてるけど、彼女はそういう物言いにはさほど慣れてはいないんじゃないかな。
 案の定、彼女は眉根を寄せていた。
 司、俺ね、困ってる翠葉ちゃんも好きなんだけど、それは自分が困らせている場合に限るんだよね。
 だから、ほかの男に困らされている彼女はとっととピックアップするよ。
「三時半、か……」
 帰ろう、と俺が口にする前に彼女が口を開いた。