「あのね、もうひとつ訊いてもいい?」
 ふたりに声をかけると、桃華さんは顔を上げ、飛鳥ちゃんには「なぁに?」と訊かれる。
「性行為が怖いって思ったら、好きな人も怖くなるの?」
 ふたりは顔を見合わせてから私に視線を戻す。
「「なんで!?」」
 あれ……?
「そんなの、こっちの気持ちが固まるまで待たせておけばいいのよ」
 と、一蹴したのは桃華さん。
「性行為自体は怖くても、好きな人は好きな人でしょう?」
 と、答えたのは飛鳥ちゃん。
 そっか……これは私だけなんだ。
「あのね、私は……意識した途端に秋斗さんも怖くなっちゃったの……」
 それはもう、どうしたらいいのかもわからないくらいに。
「秋斗先生だけ?」
 桃華さんに訊かれた。
「うん、ほかは海斗くんも佐野くんも司先輩も大丈夫。でも、秋斗さんは同じ空間にいるだけで体が硬直しちゃうくらいで――どうしたらいいのかわからないの」
 視線を手元のグラスに落とすと、
「まずはそれを飲んじゃおうよ」
 と、飛鳥ちゃんに促された。