『雅さんのファイル、見た』
 きた――。
「そうか。……なら、学園警備はどう動かす?」』
『……話、少し聞いてもらいたいんだけど』
「どうぞ」
『雅さんは自分とは正反対の環境で育った翠に憎悪の念を抱いていると思う』
 それは俺も考えた。
 たぶん、司は俺が考えたとおりのことをシミュレーションしているだろう。
 問題を前にしたとき、何をどう考えるか――それを徹底して司に教えてきたのはこの俺だ。
 シミュレーションゲームはもともと司のために作っていたもので、一定のレベルを超えてからは警備会社の社員教育で十分使えるものになっていた。
 つまり、司にはこれ以上ないくらいの危機管理能力が備わっている。
 そんな司なら、警護対象者に御園生家全員を考えることは造作なかっただろう。
 あえて俺に話すのは確実な道を行くため。
 綻びがないようダブルチェックの意味を持つ。