「十時――そろそろ連絡があっていい頃ですね」
 蔵元が時計を見たときだった。
 俺の携帯が鳴り出す。
 ――司だ。
 俺は覚悟を決めて通話ボタンを押した。
『今、時間取れる?』
「あぁ、大丈夫だ」
『警備会社のほうは粗方片付いたって聞いたけど』
「こっちは優秀な人材が揃っているし、この手の情報戦には強い人間が多いからな。開発の人間が内部監査を出し抜いて実行犯を割り出した」
 差し支えのない事後報告。
 ただそれだけなのに、口の中が乾く。
 それが緊張から来るものだと気づくのにそう時間はかからなかった。