『秋斗よ、これも課題じゃ。静も同じような道を通ってきておる。うちの一族、次期会長と呼ばれる人間は誰もがな。しかし、こればかりは唯一執着するものが現れない限りできんのじゃ。……もっとも、司があのように育たねば次期会長の推薦などされなかったじゃろうて。推薦さえされなければこんなことをする必要もなかったんじゃがの』
 じーさんの言葉が重く重く圧し掛かる。
「司があのように育たねば」――それは俺の近くにいたからほかならない。
 司の人格形成に自分が深く関わっていることは自覚している。
 そのせいで「今」があるのだとしたら――いや、あったとしても……。
「彼女を巻き込むのはやめてもらいたい」
『聞けぬ相談じゃの。お嬢さん抜きでは話が進まぬわ』
「うちの事情で彼女を混乱させるのはやめてほしい」