光のもとでⅠ

「で、性行為とかキスの話。ぶっちゃけ男は今が一番興味を示すものだと思う」
 それは少し申し訳なさそうな顔をして言われた。
「三十越えると性欲減退するっていうけど、それまではあんまり変わらないと思うし、三十越えても性欲が盛んな人間だっているだろうし」
 その答えにやっぱり、と思いつつもどこか消化できない思いがあった。
「翠葉は好きな人に触れたいって思ったことない?」
 今度は人懐っこい笑顔を向けられた。そして、ぎゅっと握りしめていた手をツンツン、と人差し指でつつかれる。
「力入れすぎ」
 指摘された手を見ながら口にする。
「触れたい、っていうのは……手をつなぐとかも入る?」
「もちろん」
 手に入れていた力を少しずつ緩め、手を広げる。
「それならあるよ……」
 秋斗さんとデートしたとき、手をつなぎたいと思った。ずっとつないでいたいと思った。
「キスも性行為も、その延長戦にあるんだよ。だから、付き合ったらしなくちゃいけないとかそういうんじゃないと思う。どうしてもそうしたくなるからするだけ。……秋兄はさ、間違っても翠葉を傷つけたくて触れようとしてるわけじゃないと思う。ただ、翠葉に触れたかっただけだと思う。好きだからこその行動……。それだけはわかってやってくれない? 行為を受け入れるとかそういうのじゃなくて、気持ちのほうだけ理解してあげてほしい」
 そう口にした海斗くんの眼差しは少し悲しそうで、声は秋斗さんに対する理解を求めていた。
 目が合うと、
「じゃ、次の人間呼んでくる」
 と、元気よく立ち上がり部屋を出て行った。