岸辺に向かうと久先輩が上がり、次に優太を上がらせた。
 最後に自分が上がろうと石に手をかけたとき、身体に力が入りづらいことに気づく。
 すると、「ほら」と優太が手を貸してくれた。
 その手を取ることに抵抗はなかった。
 警備員にバスタオルを差し出されたがタオルには手を伸ばさず、ヘッドライトを外しそれだけを警備員に押し付ける。
 すぐそこに翠がいたから。
 翠の背後に姉さんがいることから、この場を離れるよう話はしたのだろう。
 こういう場での姉さんの行動くらい確認しなくてもわかる。
 けれど、まだそこに翠がいるということは、翠が抵抗したからほかならない。