光のもとでⅠ

 今も翠の表情は見えない。
 池の方を向いたまま、転がった越谷を捉えている。
 音もなく翠が振り返る。
 その顔からは、血の気がすっかり失せていた。
「人を叩いたわ……。これ、暴力っていうのでしょ? 状況はその人と変わらないはず。証人はふたり。ちゃんと学校長に伝えてね。その人が処分を受けるのなら、私にも同等の処分を――」
 淡々と語る翠はいつもの翠ではなく、やはり、夏の翠にどこか通じるものがあった。
 それはつまり、正気ではないということ。
 吸い寄せられるように池へ向かって足を踏み出す。
 俺は反射的に動いていた。
 翠の腕を力任せに引き寄せる。