今までのやり取りをすべて聞いていたであろう人物に連絡を入れる。
「秋兄、俺のかばん預かってほしいんだけど」
『わかった、途中まで取りに行く』
「頼む」
 俺と秋兄はテラスの中央あたりで落ち合った。
「終わったら取りに行くから」
「了解」
 それ以外には何も言葉を交わさず、秋兄と別れ桜香苑へ向かった。
 翠は桜香苑を前に一度足を止めたようだが、桜香苑内にある池の周りをじっと見つめ、すぐに一点に向けて歩きだしたという。
 それも、ほぼ越谷がいるあたりを目がけて。