その週の木曜に事は起きた。
『越谷まりあが動きました』
 警備員から連絡を受けたのは三限の中頃。
 授業中ともなれば、風紀委員も気づくことはできないだろう。
『対象の携帯を盗み出した模様。監視カメラの映像を転送いたしましたので、のちほどご確認ください』
 俺は何も答えずただ聞くのみ。
 それは監視を続行するように、という意味を持っていた。
 インカムから、
『昇降口へ移動します』
 昇降口……?
 不思議に思っていると、
『一年B組、対象の靴にメモ用紙を入れました。内容を確認しだい、追ってご連絡いたします』
 その声を最後に通信はいったん途絶えた。